映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

紙の月



重い…重い…良かったです。良い映画です。感動や爽快感だけが映画の醍醐味ではないのだわ。不安感、焦燥感、そういう方面に感情を揺さぶられることも醍醐味なのだわ。

銀行に勤める契約社員宮沢りえ演じる梅澤梨花が不倫をきっかけに職場で横領を繰り返し、どんどん深刻な状況に追い詰められていく…ってな映画なんだけれども、これ宮沢りえは勿論、彼女を取り巻く周囲の人間のキャスティングが絶妙過ぎる。最高すぎる…。ここんとこ洋画ばかり見てたけどやっぱり演技の凄さをダイレクトに感じやすいのは邦画だなあ。大島優子のはまり役っぷりには驚いた。大島優子最高すぎる…なるほど~~~!ってくらいハマってた。これ大島優子の演技を見るために映画館へ足を運んでいいと言っても過言ではない。いや過言かも。でも大島優子よかったよ…。

あと梨花の旦那を演じる田辺誠一も良かった。妻の気持ちを全く汲むことが出来ない完全なキャリア志向の商社マンっぷりの「うわあああああ居そう!!!」って感じには舌を巻く。あと勿論、小林聡美も良かった!石橋蓮司も良かった!本当にいい。キャスティングがいい。不倫相手の大学生平林を演じる池松壮亮のどんどんダメ男になっていく感じも良い。「怒る?怒んないで聞いてくれる?怒るよなー…いやー俺、大学辞めたんだよね」という一連のクズ発言とかがこれまた「うわああああああ居そう!!!!」って感じ。すごいな~~~演者ってすごいな~~~。横領もリアルなんだよなあ。現実味溢れるからこそ、自分まで不安になってくるんだろうなあ。そういう意味で演出もめちゃくちゃ素晴らしいんだけども、音楽がこれまたいい…横領に手を染めようとするシーンの緊迫感といったらもう。あの「事態が悪い方向に転びまくってる感」がたまらない。ボンボボボボン……みたいなBGM。見てるこっちが生きた心地しなくなってくる。あと合唱曲の「あめのみつかいの」とか今聞いても不安になるしな。

いたたまれなさを感じるシーンは多々あって、金銭感覚のないまま不倫相手と満喫しまくった高級ホテルのチェックアウトで150万円ほどを請求されて「えっ……」ってなりつつクレジットを切ってサインする宮沢りえの、もう後戻り出来ない感だったり、認知症の大家さんに漬け込んでいとも容易く目の前で横領するシーンだったり、散らかり放題の部屋で廃人のように書類を偽造するシーンだったり、心やすまる場面が殆ど無い。あの地に足のつかない不安感もまた、快感の一種な気がする。

話の内容云々の前に役者の演技で映画館の料金分は楽しめるし、ハラハラしながら梅澤梨花の顛末を見守るという意味でも演出の巧みさゆえにエンタメ性は高い。っつーことで非常に見る価値のある映画ではあるんだけど、終わった後の気の重さといったらなかったので心に余裕のあるときに見よう。あと個人的にこれ見てる途中で財布無くしたからこの映画嫌いになりそうでした(おかげさまで翌日みつかりました。)