映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

桐島、部活やめるってよ



あああああああなんだこれは~~~~~なんだこれは~~~~~!!とっくに名作中の名作として認められた作品を今更TSUTAYAでレンタルして見てその感想を…つっても既に各所で全て語り尽くされてるだろうし、俺がどれだけ熱を入れて魅力を伝えても「その発言お前で五億人目だから黙れ」って感じだろうけど、一度この映画を見てしまったら語らずには居られないパワーがあることくらい、見た人だったらわかるでしょ!だから書きます。そして親友がこの映画をあまりにボロクソに言うので、その説得も兼ねて書きます。

バレー部キャプテンでエース、クラスの人気女子と付き合ってる完璧超人の人気者桐島が突如部活を辞めたという噂が知れ渡り、彼を取り巻く周囲の人間たちにも少しずつ変化がおこって…的な映画なんだけど、この映画は同じ時系列を何度も何度も別の視点から繰り返し映し出す手法が取られており「こいつがこの状況下におかれてた時、こいつはこんな行動をとってたのか」という風な具合で少しずつわかっていくような構造で、各々のキャラクターにそれぞれ感情移入の余地があるからとても面白い。これ感情移入出来なかったら駄作に感じるのかな~~~わからんけど。

まずこの映画を名作たらしめる魅力の一つが学校という社会をリアルに描きすぎていることなんだけど、もうこれがもうもう…もう……凄い。ほんっとにすごい。何がそんなに凄いかというと、「イケてる奴」「イケてない奴」に強制的にカテゴライズされる、いわゆるスクールカースト的な現象、そしてその息が詰まるような居心地の悪さが完璧に再現されているんですねーー。もう少しこの「居心地悪さ」について言及するならば、思春期の男女が集まるクラスという箱の中では「異性にモテる」というのが絶対的な力を持つのね。いや流石にそれが極端な言い方だとしても、人気者こそが絶対の正義という極端な評価のされ方が蔓延る空間であることに覚えはあるはず。あるよね?あ?どうなん?俺だけじゃないやろ?教室ってそういう所やったやろ?おおん? 例えば俺の小中学では「イケてない奴」には「陰キャラ」という名前まで丁寧に用意されてて、イケてないという理由だけでイケてる連中から侮蔑の対象にされるんだわ。直接的に侮蔑されるわけではないにしても、見えない格差が生まれるのです。じゃあその「イケてない」って何?と言うことを紐解けば、「運動神経が悪い」「異性と話す時にキョドってしまう」などなどという、すごい偏ったモノサシで測られるのね。「イケてる」「イケてない」という烙印を押され、そのポジションに箱詰めされた上で学園生活を過ごさなければならない。なんかよくわからんままダサいグループみたいな扱いを受ける。本作ではイケてる代表として、「宏樹」(幽霊部員なのに野球部エースの彼女持ち)、イケてない代表として「前田」(映画部部長で運動音痴の挙動不審)が描かれてるんだけど、どのキャラクターもあまりに生々しすぎて恐れ入る。

高校生の青春ドラマや映画っていろいろあるじゃないですか。すっごい胸がキュンキュンするような、告白予行練習的な(?)やつとか、精一杯エール宣言的なやつ(?)あるじゃないですか。でも本当はすっごい残酷な空間なんだよ、教室って。青春って生易しいもんじゃない…青春とは……嗚呼。その残酷さとストイックに向きあわせてくるのがこの映画なんです。大人になった今忘れかけていたあの、残酷すぎる学生時代の世界に放り込まれるだけで、この映画、恐るべしなんです。体育の授業でサッカーのチーム分けするときに取り合いジャンケンで運動音痴ばかりが余っていくところとか身を切られる思いで見てたわ……。イケてる女子グループ4人組の「いつも一緒にいるのに実は仲良くなさそう感」とかも、あれもまた絶妙にリアルな居心地悪さが伝わってきて痛い。沙奈の「は?」って言い方の威圧感は名演技すぎる。要するに、あの学校あるある感、すなわち「やめてくれ!!!あの頃を思い出させないでくれ!!!」という感じが一つのエンタメとして昇華されていて凄いなあというのが一つ言いたかったこと!映画にとって見てて退屈なのが一番避けるべきことなんだけど、この映画を見て感じる「うわあああああ!!」って気持ちもある意味一切退屈しないエンタメ要素なわけです。

先述の通りイケてるの定義なんて、運動のセンスがあるとか、異性にモテるとか、そんな雑な部分で決め付けられて「上に立つ者」扱いを受けるわけなんだけど、そのスクールカーストの頂点に立つような男が「桐島」だったわけです。その桐島が何の理由かわからぬまま突如ボス猿を引退することで、スクールカースト上位層の人間が大いに狼狽する。特に桐島に最も近しい人間であった宏樹がショックを受ける。イケてる人間どもの地盤が揺らぐ! 一方で、元々好きなものに打ち込んでいただけのグループは一切ブレない。ブレずに好きなものに打ち込み続ける。桐島が居なくなることで激しく動揺する人間達と、桐島が居なくなろうがやるべきことが何ら変わらない人間達。前者が後者を見下していた学園ヒエラルキーの元、桐島が居なくなることでその土台が根底が、覆る!!そんな状況からの、映画部が「イケてる連中」と屋上で対峙するあのラストシーン。前田が叫ぶ。「お前らのほうがおかしいじゃないか!!!」そして更に続く、あの展開。「ロメロだよ、そんくら見とけ!!」これをカタルシスと言わずに何と言えよう!!!!!前田お前格好良すぎる~~~~!!!ってこと!!!!

何かに魂を注いでる人間は格好いい。めちゃくちゃ格好いい。それは神木くん演じる映画部の前田であったり、野球部のキャプテンであったり、宏樹に片想いしつつも吹部の部長である責任感に悩む沢島さんであったり。彼らはあまりに魅力的すぎる。スポーツ万能で練習しなくてもエース級の実力が発揮できる宏樹なんかより、こだわりの8mmカメラで拙い映画を制作する前田の方が、よっぽど格好いい。よっぽど格好いいんだ。

宏樹が、なぜそんなに必死に映画を撮るのか前田に聞く。すると前田は相変わらずきょどりながらも、答える。「それは…うーん…でも、時々ね、俺達が好きな映画と、今自分たちが撮ってる映画が繋がってるんだなーって思う時があって、いや本当にたまになんだよ…たまになんだけど、それがなんか…へへっ…」宏樹は大いに動揺する。自分なんかより断然格好いい前田の存在を知る。続いて前田が宏樹を褒める。「やっぱ格好良いね…。格好いい……」対して宏樹は情けなさに涙する。「いいよ、俺は……いいって…」前田の元を去り、野球部が活動するグラウンドを眺めながら立ち尽くす宏樹……最高のラストシーンです!!!なんだこのラストシーン!?!???ええ!?!

別にこれを見て「俺のイケてなかった学校生活は無駄じゃなかったんや!!」とか思ってないけどね!?「リア充が人生の勝ち組で非リア充が人生の負け組だと思ってんじゃねーぞ!!カスみたいなものさしで人を勝手に見下してんじゃねーぞ、おん?」とか思ってないけどね!わけわかんない基準で評価をくだされ烙印を押されるような残酷な世の中でも、自分が魂注げる何かがある人間は、ドラフトをいつまでも待って打ち込み続ける人間は、格好いい、魅力的だ!それを教えてくれたこの映画が僕は大好きです…大好きです。

もっともっと語りたいシーンは多々あるけどキリがない!前田とかすみが日曜日偶然イオンの映画館で会うシーンの絶妙な身悶え感(普段女子に免疫がない男は、ああいうほんの少しの出来事でコロっと惚れてしまうってのもあるあるすぎて辛い。)とか、宏樹が「次の試合は出ます」って言いかけた時にキャプテンが「次は勝てる気がするから応援しにきてくれ」って重ねるシーンのざまぁみろ感とか、いろいろあるけどキリがない!バレー部の風助とか、映画部副部長の武文とか、この記事で一切触れてないけどめちゃくちゃ魅力的だったキャラもたくさんいる!!…でも本当にキリがないので最後に前田の自主制作映画に登場する粋なセリフを紹介して、この駄文を締めます。是非TSUTAYAで借りて、実際にこのセリフ聞いてみて!ぜったい感動するから。

「『戦おう、この世界で。俺達はこの世界で生きていかなければならないのだから。』……覚えといてよ。」

おわり。