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映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

西遊記 はじまりのはじまり



見る前までさほど興味無かったのにいざ見てみたらめちゃくちゃ良かったわ…素晴らしい。チャウ・シンチー恐るべしですわ。予想をはるかに超える映画でございました。

妖怪に勝てない三蔵法師である玄奘が周囲にやんややんや言われながらも妖怪と戦っていく話なんだけど(未だかつてない雑なあらすじ)、まず最初に声を大にして言いたいこととして、この映画、ポスターアートから伝わるような子供向け映画じゃないからな!!なめてかかって見たらマジでボッコボコに打ちのめされるから、是非見てくれ。予告編みて「んん~西遊記か~~。いや今更西遊記って言われてもなあ~~~。んん~~~。」とか感じる気持ちはわかるけど、その枠は絶対超えてくるからな。それだけ知っておいて下さい!

まず冒頭からがっつりハートを掴まれる。妖怪のフリをして小さな娘を驚かせるために池に潜ったお父さんが本物の妖怪に食べられてしまうシーンから映画が始まるんだけど、これがグロい。めちゃくちゃグロい。明らかに苦しそうに足をバタバタさせてるけど、娘はあやされてるとしか思わずキャッキャキャッキャと笑っていたら、池がじんわりと血に滲んでいき、足が沈んでいく。 まずこのシーンを見た僕らは、大いにゾッ…とする。観客はつかまれるのである。掴みはOKってやつである。何を掴まれたかというと、「えっ!この西遊記、こんな惨たらしい死に方するんだ!?」という認識である。子供向け的な前提が払拭されて視聴に全く気が抜けなくなるのである。思いの外、容赦がない映画だったのである!!

かと思えばシリアスとギャグのバランスがえらいトリッキーに組まれてて、それが強烈な映画の色になっていた。例えば魚の妖怪(沙悟浄)から逃げ惑う村人たちのめちゃくちゃシリアスなシーンでさえ、「この位置までくれば安心です!」「え?本当?」「本当です!見てください!」「あ、ほんとだ!」という会話を交わした瞬間に魚に食われたりする様はギャグでしか無かったし、緊迫したシーンでつい吹き出してしまうこともしばしばあった。つまるところ、泣かせたいのか笑わせたいのかどっちやねん!というシーンが沢山ある映画であった。楽しめる要素は全部詰め込んでやろうという謎のサービス精神(?)は全体のバランスを大いに無視しており、こんなこと他でやったら短所でしかない気もするんだけど、殊この映画に関して言えばいっそ清々しいものがあって非常に好感が持てた。シリアスシーンとギャグシーンが交互にくるどころか、シリアスシーンにギャグを持ってくるというのがこの映画であり、それが何故か心地いいのだ。すごい。  

そしてキャラの濃さも良かった。途中で出てくる妖怪ハンター三人衆の虎筋蟷螂アニキ、空虚王子、足じいとかも面白いし、孫悟空のぶっ飛び具合は悪役としてもギャグとしても強烈すぎて印象に残らざるをえない。空虚王子と雇われてるおばさんの会話がアホらしくてアホらしくて、館内自分含めて3人しかいなかったのに皆笑ってたわ。ギャグがいちいちアホらしくてそれがめちゃくちゃ魅力的なんだわ。「くっだらねーーー!」っていう笑いがガンガン畳み掛けてきて楽しい。あとやっぱりラストの孫悟空のバトルは滾る。

くだらなすぎて逆に吹き出してしまうようなギャグも、固唾を呑んで見入ってしまう容赦無いバイオレンスシーンも、痛快なアクションシーンも、ごっちゃごちゃに含まれてるのがこの映画の魅力であることはわかって頂けたかと思うけれど、実は中でも主軸となっているテーマが「愛」だったりする。ただここだけどうしても感情移入できなかったんだよなあ~~~。全体的に素晴らしかったんだけど愛というテーマだけ全くノりきれなかった。どういうことかというと、ヒロインの段ちゃんが終始玄奘に求愛し、玄奘がそれをひたすら拒むんだけど、この拒み方が冷たすぎて主人公の玄奘に対してイライラしてしまう。もはや「突き放す」と言っても過言ではないシーンが何度も繰り返されるし、挙句の果てには段が玄奘にはめてあげた指輪に対して「愛してない人からの指輪は貰えない。はずしてくれないなら俺はこの指ごと切り落とす。」的なことを言い放つし、そこまで言っちゃった玄奘がラストの展開で段ちゃんに対してどう心を開こうと「いやお前さっきまでボロカス言うてたやん…」ってことになるし、心を開くに至った理由もなんかあまり納得行かなかった。でもその分段ちゃんの一途さは伝わってきて良かったけどね!それとCGのしょぼさも少し気になった。隠そうともしない合成っぽさはギャグなんじゃないかと思った。ラストのバトルシーンは良かったんだけど…合成技術だけが…なんとも…。

ともかくこの映画は西遊記であることさえも忘れてしまうくらい斬新で、無限に焼き回されてる西遊記特有の飽々具合は一切ないのも魅力の一つである。それでいてラストシーンで ちゃーーんとタイトル回収してスッキリさせてくれる非常に気持ちいい締めも用意されており、見終えた後の心地よさも最高でございました。こんな全方向にぶっとんでる映画なのに「ああ、これぞ西遊記だなあ」ってちゃんと思わせてくれるんだから。