映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

ゴーン・ガール



注:本文はストーリーの内容を説明せずとも感想として間接的にネタバレを含みますので、視聴予定の方はご注意を。(ミステリー映画の側面はあるもののトリックや真犯人などを主眼に置いた映画ではないので、個人的には読んでも平気だと思ってます。いやそんなことないかも。適当。)

 

あああああ凄すぎる。凄すぎる映画が来ました。良かったです。やばすぎる。やばすぎるのが来た…。2回見てきました。2回見たことにより奇しくも2014年最後に見た映画であると同時に2015年最初に見た映画となりました。

結婚5周年の記念日に突如姿を消した妻エイミーを捜す夫ニックが、警察や世論から逆に妻を殺した真犯人なのでは?と疑いの目で見られながらも真相を追う…的な映画なんだけど、非常に良い意味で、予想外に重い映画でした。まず予告編で想像するようなミステリー映画としての内容は前半までで終了し、真相が一気に明かされても尚ストーリーとしては中盤です。この畳み掛けるようなタネ明かしシーンが実に爽快で、同時に妻のエイミーが心情を吐露するのだけど、ここのセリフがまた面白い。

    男は誰しも女に「自分の理想」を押し付けてくるし、女はそれに合わせようとする。オタクな男に対して女はその知識をつけようとするし、ポルノ大好き男に対してはイケイケな女を演じる。私だって夫ニックに対して理想を演じてきてあげた。ファッションも、体つきも彼好みに調整して、求めてくればフェラのサービスもいつだって応じた。なのに、相手(ニック)は自分の理想に近づく努力を怠った。私の理想に合わせることをやめ、私の嫌うくだらない男に成り下がった。そしてあろうことか若い女に浮気する始末。私だけが理想を演じ続けるなんて冗談じゃない。、演じることを辞めた貴方には罰を与えなければ。

 セリフは全然違うけど、妻のエイミーはだいたいこんな意味のこと言ってました。エイミー達観しすぎでしょ……幸せな結婚生活の定義を、愛しあうことではなく互いに理想を演じることと置いてるかのような語り口なのである。違ったらごめんね。(適当

エイミーが本作でとった一連の行動の動機を説明するなら「ニックがエイミーを愛さなくなったから。」と言えるかもしれないけど、もっと具体的に言えば「ニックが"理想の夫像"を演じることを怠ったから。加えてエイミーには尚も理想を求めたから」なんじゃないかというお話なんですねーーーーー。ここが重要なんですねーーー。だからね。物語の後半で夫ニックがテレビ放送を介してエイミーへ語りかけるシーンがあるんだけど、それを見たエイミーがアイスを食べる手も止めて食い入るようにテレビを見つめたのは、ニックが再び自分を愛してくれたことが嬉しかったから…なんかじゃあ全然なくて、自分が求める夫像をそれこそ完璧に演じていたからなんだわ。映画のラストは「さあ、周囲が羨む理想の夫婦である我々は、これからも存分に"役割"を"演じて"いきましょうね」というエンドであると解釈できて、これがもう、ズシーーーーーンと、重く重くのしかかるんですね。男性にとてもありがちな方向のクズに成り下がったニックが、否が応でもエイミーと同じ「演者」という立場へ引きずり出された上で改めて結婚生活を過ごすという、 ある意味本当のスタートとも言えるシーンからの暗転、スタッフロール……という流れ。たまらんよね。

いやーーーでもこれが結婚の真意だなんて思いたくないねーー僕はねーーー結婚したからには役割を演じるとかではなくですね?素朴にパートナーと末永く幸せにですね、愛し合ってですね?年寄りになっても仲良くですね??ねえ?やめろ!やめろや!この映画やめろや!!やめなさーーい!だからねーーーー。ほんっとこれ若いカップルで見にきてる人達も結構居たけど、これ、これを見て何を思うんだよ君たちは。大丈夫か?なんでこれを恋人と見に来たんですかーー大失敗でしょテーマ的に!ともかく最後の最後、怒涛のラストシーンを見終えた後に流れるスタッフロールをぼんやり眺めつつ「やばい映画を見てしまった……」と余韻にふけるあの感覚は絶対に劇場で味わったほうがいいと思うからやってる間に是非見てくださいマジで。BD借りるのとはわけが違うんですよ、劇場は!

長くなってきたけどまだ全然語り足りなくて、ベン・アフレックロザムンド・パイクの主演二人、彼らの演技力はこりゃもう絶対に言及しないといけないところなので少しだけ言わせて欲しいんだけど、二人共鬼のようにハマり役で恐れ入る。ちょっとした虚ろな表情だったり、目配せ、ほんの少しだけ口元が上がる感じ、甘えているようで支配的な上目遣い、等……これは本当にもう「目は口ほどに物を言う」を演技で体現してしまってて、もう、もう!!これ絶対見なきゃわかんないと思うから見てほしい……長ったらしい言葉で説明するよりも1カット見せる表情の方が五億倍の説得力を帯びるんだなと。役者ってすごい。例えばいっちばん冒頭に映るロザムンド・パイク演じるエイミーと、いっちばん最後の最後に映るエイミーの、非常に微妙かつ全く意味合いの違う表情の変化とかは、必見!!!なので、頼む見てくれ~~~~あとやはり演出面すごすぎますね。原作のセリフそのままなのか変えてるのかはわからないけど、夫婦の馴れ初めやプロポーズなんかのちょっとした会話を取ってみても、絶妙な「お似合い感」が出ててそれがまたいい!!これぞ理想!という感じが今思えば逆に痛々しいんだけど、それでも憧れてしまうようなシーンだった。更に細かいところに少しだけ触れるならば、先述したイチャイチャシーンで流れるBGMが、後半になってからどのタイミングで再び流れるかというところも注目ですわ~~~同じBGMなのにこれまた全然意味合いが違うではないか!!と。こういう粋な重ね演出が光るなぁと複数の箇所で思いました。それと両親が「理想の娘」を描いた絵本「アメイジング・エイミー」で富を築いたという設定もまた、エイミーが理想像を演じさせることへの執着に対する裏付けとして説明できてるのも上手いですな~~。

主演以外に関しても、後半出てくるデジーという人物がまさしくエイミーの嫌う「理想を押し付ける男性」の典型例すぎて、こいつほんと最初から最後までいいキャラしてんなぁ…って思ったり、ニックの妹マーゴが良い子すぎて好感度半端じゃないとか、ほんと言ったらキリがないけど、ともかく全体的に良かった。でも手放しに勧めづらいんだよな~~ショッキングなシーンもちょいちょい含まれるし、内容が内容だし……でもこれは本当に何度でも見れる映画です。ぜひ劇場で。おわり。