映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 感想

アカデミー賞作品賞!っつーことでめっちゃ期待しつつ。公開後の感想を見てるとどれも微妙なテンションで不安にもなりつつ。そんなバランスの中で鑑賞しましたが、いやいや、こちら面白かったですぞ!!

f:id:ma2baga2:20151119213341p:plain

 

かつてヒーロー映画「バードマン」の主役を演じて時の人となったリーガンが、ブームが去ってすっかり落ちぶれた後も自分が仕切る舞台の成功により再び名声を得ようと奮起する…あと家族との絆も取り戻したい……的な映画です。

この映画はアカデミー作品賞や監督賞を受けている作品であり、その割に王道的ではないというか、わかりやすくないというか、観客に解釈を委ねられる系の作品なので、公開直後のYahoo!映画レビューは賛否が真っ二つでした。「オスカー受賞と聞いて見に行ったら芸術ぶってるだけじゃねぇか!」という意見や「シネフィルの僕にとっては名作だ!これを駄作呼ばわりするリテラシーの低い奴らは一生アナ雪でも見てろ!」という意見など、賛否両論が飛び交っております(悪意ある表現)。 俺もアカデミー作品賞ということで公開までワクワクしてたんですけれども、評判(主にYahoo!映画調べ)が微妙なせいもあって観るのが遅くなりました。

で、やっと観てきてどうだったかというと、普通に面白かったです。面白いやん!!!前述の通り、レビューとか観てると「芸術性に傾倒するあまり退屈」「意味がよくわからない」という意見や「普段から映画を見てる俺からしたら分かり易いわ」「解釈に深みがあっていい」という意見が飛び交ってて、もう、端的に言って第一印象からして面倒臭かったんですね〜〜〜。この映画面倒くせーーーー!!!これ駄作扱いしたら自称シネフィルに見下されるやつやーーーほげーーー!!って感じだったんですけど(ただの風評被害)、実際見たら驚くほどすんなり楽しめました。面白かったです。 少なくともこれを観て退屈はしないんじゃないかなーー。要所要所に笑いどころが多々用意されており思わずクスクス笑ってしまうのです。そこまでコメディというわけではないけど、本人達が大真面目にやってるからこそ客観的に見てると滑稽に見えて思わず笑ってしまう…という図式です。バクマンで名付けられたところでいう「シリアスな笑い」が豊富なのです。予告編でも印象的な、リーガンがパンツ一丁でタイムズスクエアを闊歩してるシーンなんてまさしくね。本人は大真面目だからね。余談だけどあのシーン、タイムズスクエアを貸し切るのは物理的に無理だからという理由で、撮影地からちょっと離れたところにバンドを雇って演奏させることで群衆をそっちに引きつけて、それに皆が気を取られてるうちに撮影したらしいね。なんやそのトンチを使った撮影方法は…。あと、リーガンとマイクがもめた挙句に素手で乱闘するシーンのモタモタ感も面白かった。

印象的なのがファーストショットで、リーガンが胡座をかきながら宙に浮いてるんですね。え、何この人、超能力者なの?と、まず思う。その後も手を触れずにどんどん物を壊したり、まるでリーガンがとんでもない才能を秘めてる人間かのように写る。かと思えば別のシーンではその超能力は単なる妄想であるかのようにも写る。例えば、リーガンが荒れ狂って楽屋のものというものを超能力で壊し続けるシーン。騒音を聞きつけた仲間が部屋に入ってくると、リーガンはただ部屋で暴れ倒してるだけのように写っている。話が進むにつれて「あ、やっぱり実際には能力なんて無い凡人なのか…」という確信が強くなる。にも関わらずリーガンは「俺は飛べる!」と屋上からダイブしようとしたりする。見てるこっちも「いやお前そんな能力ないから普通に死ぬって!!やめとけ!!」とか思ってしまう。そしたらまたそのタイミングで、彼はとんでもない能力を発揮する!自由に宙を駆け巡る!!指をパチンと鳴らせば街中に隕石が落ちてくる!!めっちゃ気持ちいい~~~~~!!!!やっぱり飛べるやん!!!やったれバードマン!お前はヒーローや!!車道を走る車を追い抜き気持ちよさそうに宙を舞い、目的地の舞台に到着する!!!……という快感のシーンがひとしきり終わると、後ろから「お客さん!代金貰ってねぇよ!!」と、タクシーの運転手がリーガンを追いかけてくる。うおおおおおいタクシーて!!結局今のも妄想かよ!!!

要するにですね。超能力を「栄光を手にしたかつての自分の投影」、「理想像」とするならば、バードマンのように自在に空を飛ぶことに彼の望みを重ねるならば、俺はバードマンだ!!!という気持ちいいシーンを見せてくれた後には必ず、結局そうはいかないという着地も伴ってきやがるんですね。「俺はバードマンだぞ」というリーガンの想いと、裏腹の現状どちらにも共感させられる。だから見方によれば、家族からも群衆からも見離された惨めな男の末路を描いた物語。そんな彼が最後にとった行動。そして、ラストシーン!!!エマ・ストーン演じる娘のサムが、窓から空を見上げた時のその景色!!!!!ほら!!自分以外の人の目にもちゃんと映ってるじゃないか!!!ついに他者(しかもその相手は一番溝を埋めたかったであろう娘のサム)に認められた瞬間じゃないか!! え、めっちゃ最高な幕引きじゃないですか???

というわけで僕はだいぶカタルシスを感じつつ映画館を後にしたんですけど、いろいろ調べてるうちに、あの最高のラストシーンも含めて彼の妄想である説が濃厚になってて、うおおおおおんってなってます。救いはないんですか!

やはり言及せずにはいられないのが撮影の長回し(っぽい技術)。二時間近くずっとワンカットなんだからすごい。長回しすごいでしょ?ってだけじゃなく、前述の通り、場面を区切らないせいで各シーンが現実なのか幻想なのか次第にわからなくなっていくんですね~。そもそもこの映画全てが主人公リーガンの幻想じゃないかという意見もあるくらいだけれど。いやーーーそれでも。ラストシーンが妄想であろうと、俺はリーガンという男の生き様(というには格好悪いものかもしれないけど)を見届けられたから、それでいいんじゃないかな~~~~~なんだこの適当な落としどころ! おわり。