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映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

チャッピー 感想

無類に面白い痛快ハードSF映画でありながら、物語は受け入れがたい方向へどんどん進んでゆき、凄まじくいびつなバランスの映画でした。なんだこのモヤモヤした感覚は!

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2016年のヨハネスブルグはギャングたちの蔓延る治安の悪い街だったが、人型ロボット警察を導入することで順調に犯罪者を取り締まっていた。そんな中、ロボット開発者のディオンはプログラミングの域を超え「知能」を持ったロボットを開発する。テストを試みようとしていた矢先に、ギャング達へロボットを奪われてしまい…的な映画なんだけども。ハードSFとしての舞台設定、ガジェットの魅力、絵面のワクワク感、そういった面では凄まじく高水準に面白く、さすが第9地区のニール・ブロムカンプ!と絶賛出来ます。しかし話の展開がどんどん辛い方向に進んでいくせいで「めちゃくちゃ面白いのに辛い!!めちゃくちゃ良い映画なのに素直に好きになりにくい!」という奇妙な感想を持ちました。この感覚がどういうものかを今から説明していきます。

第9地区」の監督っぽさ満点なのが、何よりガジェットのワクワク感。冒頭からドキュメンタリータッチで描かれる手際の良い舞台設定の説明演出、人口ロボットが悪党を取り締まっていく世界。面白い!!!そんなロボットに心が宿るんだから面白くないわけがない!!そう、実際無類にめちゃくちゃ面白いわけです。「ロボット」の「子育て」をする「SF」!!おもしれーーー!!!ただし子育てするのは「ギャング」なんですね……この設定は斬新で面白くもあり、しかし見てて辛くなる。チャッピーは起動した時点で、言葉も物事の善悪もわからない、まさしく「赤ん坊」です。本来赤ん坊は親の愛情をたっぷりと注がれながら育っていきます。その中で、人を叩いちゃいけない、物を盗んじゃいけない、挨拶の仕方、礼儀、そういったことを親が少しずつしつけることで子供は成長します。しかしこの映画では、何物にも染まっていない純粋な赤ん坊であるチャッピーを、ギャングたちが犯罪の道具として育てようとします。人の殺し方、車の強奪の仕方を、仕込まれていくのです。

もうこれは虐待の映像を延々と見せ続けられているかのような不快感です。目を背けたくなるほど辛い。前述の通りチャッピーはいたいけな子犬のような存在なのに、そんな子犬に殴る蹴るの暴力を振るい、火炎瓶は投げつけるわ、腕は切断するわ。チャッピーは「やめて!お願い!!」と助けを乞いつつも、なぜ自分が暴力を受けるか、なぜ人間が自分に危害を加えるか、全くわからぬまま「なんで?どうして??」と混乱してゆく映像がかなり長い間続くので僕はもう腸が煮えくり返りました。これは最早「虐待映像の鑑賞会」に他ならず、不快でしかないんですね。そのせいもあって余計に物語における僕の望みは「チャッピーに穏やかにすくすくと育って欲しい」の一点に集中していくこととなります。にも関わらず、その後も純朴なチャッピーはギャングのお父さんのいうことをホイホイ信じるので、それが「悪行」であることさえも気づかぬままに犯罪へ加担させられ、自覚のない暴力を強いられます。もうダメだこの映画……少なくともこの時点で俺が個人的に理想とするハッピーエンドへの道は全て棄却されてる……。辛すぎる……俺はただチャッピーに幸せになってもらいたいだけやのに……。つまり「物語はどうでもいいからチャッピーを救ってほしい」とさえ思えてしまって、僕のチャッピーに対する個人的な思い入れが最早ノイズになるという意味不明な状況に陥ってしまいましてね……うおおおんチャッピー……。

更にこの映画の胸くそポイントを上昇させる悪役ヴィンセントムーアがいまして、チャッピーの生みの親ディオンの技術力に嫉妬し、ディオンを陥れるためにチャッピーを拉致するクソ野郎なのですが、こいつは今年のベスト胸くそ悪役部門にノーミネート確実です。彼には作中で死ぬほど酷い目に遭ってもらわないと全く溜飲が下がらないなと思いながら見ていました。実際にラストシーンではチャッピーが成敗してくれて僕もそれに少なからずスカっとしてしまうわけですが、そもそも「チャッピーには穏やかに育ってほしい」という二律背反する思いも自分にはあるので、チャッピーがヴィンセントムーアをボコボコにしてくれたという爽快感の裏にはチャッピーが自発的に暴力行為を行う子に育ってしまったという悲しみが伴っているわけで、どう足掻いてもほんとうの意味では爽快にはならないんですねーーー。(チャッピーが殴るのを我慢して「俺は許してやる…」とか言ったら、今度はヴィンセントに対する溜飲が下がらず、それはそれでスカッとしないというジレンマ。)

ギャングでありチャッピーのパパでもあるニンジャ(そういう役名)も最後にはチャッピーに情が移って改心したかのような行動をとっていたけど、いくら身を挺して守ろうとしていても前半のチャッピー虐待シーンがどうしても許せなすぎて全くヒロイックには映らなかったし、うーーーーむ……バランスが難しい。他のレビューを見て回ったところ僕のような感想を述べてる人は見つからなかったし、僕が的はずれな部分に固執してるんだろうなとは思うけど、映画ってそういうのあるよね…。

べらべら文句を垂れてるけど、映画としてめっちゃくちゃ楽しいのは間違いないのですよ。戦闘シーンとかロボのガジェットとかのワクワク感は勿論のこと、軸となるテーマとは別にエンタメ要素を大いに盛り込み映画としての楽しさを底上げする姿勢は第9地区と同じく監督のわかりやすい魅力だと思うし。生まれた時点では真っ白な存在である赤子が、背中を見せる人間によってどうとでもなるというのがよくわかるな~~~。ニール・ブロムカンプ監督は第9地区もそうだったけど、物の見せ方で観客の考えをコントロールするのが巧みやなあ。テーマそのものを映画でわかりやすく語るのではなく、物語に自分を没入させることで僕らに自ら思考を促すというかさ。

結論から言うとほんっとーに面白かったです!マジで!でもこの胸に残るモヤモヤはなんやねん~~~~うおおおおおおチャッピーが穏やかな性格を持って「人間の胸を打つ芸術品を創造するロボ」として詩や絵といった芸術面で大成するアナザーストーリーも作ってくれ頼む~~~~~~;;;;;あとラストのトンデモ展開なんやねん~~~~SFはこれやからもう~~~~~;;そしてネットで散々騒がれてた「過激な描写の規制」に関しては最後まで全く触れないスタイルです。 おわり