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映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

ヴィジット 感想

鑑賞後のこの名状し難い気持ち。

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母が仲違いしていたせいで生まれて一度も祖父母に会ったことのなかったベッカとタイラー(姉弟)が、初めて祖父母のおうちに孫二人だけで遊びに訪問する。でも一緒に過ごすにつれて祖父母の頭が狂ってることに気づきだしてビビる…みたいなストーリーなんだけど(説明下手くそか)、物語が進むにつれてじわりじわりと不安感に襲われるこの感覚がたまりません。特に、田舎住まいで滞在予定の一週間は絶対に帰れないという設定がいい味を出しています。

1日目は気楽なもんで、和気あいあいとお菓子作りをしたり、弟が得意のラップを披露したりと穏やかな日常って感じなんだけど、2日、3日と経つごとに祖父母の挙動が狂気じみてくる。日に日に狂気は加速する一方で姉弟らが並々ならぬ不信感を募らせるも、家には帰れずまたその日も悪夢のような夜がきてしまう……これが否応なく一週間続く。

ポスターアートや予告編から強調されてたんだけど、「21時以降は絶対に部屋から出ないでね」という祖父母からの妙な約束事を初日にされるせいで、観てるこっちも21時を過ぎると無条件にピリピリと緊張が走る。実際その時間を過ぎると部屋の外から異音が聞こえてきたりして恐怖の長い夜が始まるわけなんだけど、また朝になるといつもの祖父母に戻ってる。だからこっちは「早く夜が明けてくれ、朝になってくれ…」と思いながら観ることになる(終盤になると昼夜問わず狂い始めてたけど)。で、存分に怖がらせられた後は途端にブツ切りで翌朝のカットになり、馬鹿でかい赤の文字で「 ○曜日(○日目)」というテロップが入る。この演出がたまらなく、クセになる……!!!僕が観た劇場では、シーンが朝に遷移する度に観客の「ふーーーーーーっ」という溜息があちこちで聴こえてきました。みんな緊迫して息が詰まってたんやね。

面白いことに、死ぬほど怖いシーンでも何故か同時に滑稽で笑ってしまうという不思議な感覚がこの映画にはある。例えば、明らかに異質な音が部屋の外から鳴り響いてて、弟が恐る恐る扉をあけるシーン。この恐る恐る覗きこむ感じが無音やPOV方式の効果もあってベタでありながらマジで怖い!!!そして、くるぞ…くるぞ……って感じで開けた扉の向こうには全裸で壁を引っ掻いてるババアの姿が!!!!っていやいやいやいや…怖いけど、怖いけどなんやねん…狂気的やけど絵面だけみたら笑ってまうやろ。そんな奇行に姉弟がびっくりするところでそのシーンはブツ切られて、突如翌朝に遷移したりする。これは桂枝雀の提唱でおなじみ「笑いは緊張と緩和から生まれる」って理論も備えてると思うのよね…。毎晩、21時を過ぎたら観てるこっちも不安で不安で息が詰まる。【緊張】→ババアの奇行を見せられる。【は?】→翌朝にシーン切り替え【緩和】というね…。ん?いや書きながら思ったけどちょっと違うな??まあいいか。

しかもですね。タチが悪いことにこの祖父母は「年寄りだからボケてるんだ。」だの「持病の発作だから気にするな。」だのと正常な素振りを見せるから、姉弟たちも「怖がっちゃ失礼なのかもしれない」と、納得せざるを得ない状況が続くんです。それでも日を追うごとに狂気は容赦なく増し続け、ついに異様さが確信に変わった頃には……という、この感じ。たまらない。しかも正常な素振りで姉に「オーブンの中に入って内側を掃除してくれないかしら?」とか手伝いをお願いしたりするから、見てるこっちはもう、もう、もう。あのシーンまじで最高。しっかりやるのよ!的な感じでお尻をポンッと叩くだけでも、こいつ何かしでかすんじゃないだろうなと不気味だから心拍数上がる上がる。ちなみにこのシーンは公式で本編映像がYoutubeにあがってるので是非観てください。

ちなみに全編通してめっっっっっちゃ怖いですよ!!正直、ビビりのクセによく一人で観れたもんだと思います。特にやっぱカメラを見つけたババアのシーンは怖かったけど、静かな時に突如大音量でギャーー!ってやつはそりゃビビるでしょ…とは思いますよね。そういう意味では、姉弟が恐怖のあまり家から逃げようと玄関の扉に近づいたら、外で首を吊られてる隣人がチラッと見えて「何あれ・・・・」って言うシーンの絶望感が一番でしたね。家も外も絶望。もう何もかも駄目だこれは……もう、あのシーン、無理でした。(?)

で、この映画を観た人は誰もが「役者が良かった!!!」と言うはずなんです。狂った老夫婦の名演も天晴なんだけど、やっぱり何よりタイラーという弟役を演じるエド・オクセンボールドくん。最高すぎる。最高すぎる。トラウマ克服シーンは勿論のこと、「お祖母ちゃんの真似~」とかいいながら狂ったように右往左往するシーン最高ですよね。大人びた姉の「ちょっと、やめなさいよ!」ってたしなめ方も含めて、最高。

そして単なるホラー映画に留まらず、この姉弟の成長譚になってるのが非常によい。まあこのあたりはヴィジットを扱う感想ブログ読めば絶対書いてるようなことだろうから、今更ここで特筆するのも恥ずかしいんだけど。この姉弟にはそれぞれトラウマじみたコンプレックスを抱えてて、彼女らが恐怖と戦うことがそのままコンプレックスに打ち勝つ戦いにも繋がっていて、だからこそラストのカタルシスがこの映画を名作たらしめてるのだと思います!!!あ、出たぞ、カタルシス!!!!ああ、そうさ。僕みたいなカタルシスおじさんはカタルシス厨だからカタルシスが大好きなんだ。でもあまりカタルシスって言葉使いすぎたら「カタルシスだけが映画の魅力じゃない厨」に捕捉されるから注意が必要さ。おじさんとの約束だよ。

ということで、めっちゃ怖くて面白いのでオススメです!!!!!!(雑まとめ)