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映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

ルーム 感想

この、誰もが口をそろえて良作と言う本作を鑑賞して、「アカンかった」と感じた僕の話を今日は聞いてください。。。 

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本作のネタバレ:前アナウンス付でネタバレしているトピックがあります。未視聴の方は読み飛ばし下さい。また、全体通して「結局この二人が脱出できたのか、できなかったのか」という、予告編で既に言及されている展開については本記事でも明かしているのでご注意ください。

f:id:ma2baga2:20160125005641p:plain名演技・名演出が可能にする、幼少期の追体験。

のっけからアカンかったとか言ってしまいましたが、アカデミー賞受賞作ということからもお分かりの通り、作品のクオリティはケチをつけようのないものです。

まず、誰の目から見ても明らかな魅力として、非常に秀逸な"子供目線演出"が挙げられます。これが本作の肝であることは間違いないでしょう。「大人からすれば見慣れた光景も、子供から見るとこんなに新鮮!」といった感覚を疑似体験できる面白さ!!これらは的確な演出手法もさることながら、演技っぽさを全く感じない子役の演技が後押しして、とんでもクオリティで実現された奇跡の賜物と言っても過言ではないように思います。

例えば僕らは、知識として「雨」を知っています。何度も見ているし、仕組みも理解している。だから突然空から水が落ちてきても「雨が降ってきたな」としか思いません。しかし、雨を全く知らない人から見たら「うわああああ急に空から大量の水が!?!??」という反応になるわけです。僕達も、忘れてしまっているだけで、「初めてその事象を認識する瞬間」を重ねて生きてきたはずなんです。(余談ですが、幼少期に初めてFAXを見た時「声だけじゃなく紙もワープできるのか!!」と驚いたのを覚えております。)そして、その経験を再びこの年齢で味わうことができるのがこの映画の凄いところであります。ましてや、作中のジャック君は生まれた時から自覚もなく監禁され続けてきたので、雨どころか空を知らないのです。故に、一面に広がる青空を初めて目の当たりにしたジャック君の脱出シークエンスは、文字通りの「映画でしか味わえないシーン」となっているのではないでしょうか。

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うわーー!なんだこの巨大な空間は!!という挙動を演じきる、ジェイコブ君。名演中の名演。

また、前半の「狭い部屋さえも広大に感じる」という"世界を知る前"の感覚と、「昔過ごしていた部屋ってこんなに狭かったっけ???」という"世界を知った後"の感覚を、どちらも表現しているところも素晴らしい。カメラの画角や被写界深度を変化させることで、自然とそのように感じられるみたいです。僕は知らんけどタマフルでそんなこと言ってたよ~。(適当すぎ

これまた自分語りになって恐縮なのですが、そういえば大人になってから母校の小学校へ足を踏み入れたことがありまして。その際に「え!?運動場、狭っ!っていうかバスケットゴール、低ッ!!!」と、驚いたことを思い出しますね。本作は、あの不思議な感覚を見事に表現しておりました。

f:id:ma2baga2:20160125005641p:plain本題が吹っ飛ぶくらいに、胸クソ悪くて尾を引き続けた。

しかし、僕はあるノイズによって、今まで褒めた内容の半分さえ味わうことができませんでした。そのノイズとはズバリ、拉致監禁描写に対する憤りです!!どひゃーーー(雑)。簡単に言うとですね。拉致監禁の犯人が胸糞悪すぎてムカムカしちゃって、もう本題に集中できなくなっちゃったんです。はあああもう本当ダメ…耐えられない……ジャックくんの成長に微笑ましく目を向ける余裕なんて全然ない……。今思い出しても不愉快極まりない。ていうかこの映画、それしか覚えてない…。(それは言い過ぎ)兎にも角にも、僕にとって本作が「アカンかった」理由はその一点です。監禁ダメ、ゼッタイ。

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平穏な生活に見えなくもない冒頭シーンからは考えられないほど、事態は凄惨な状況へ。

 

本作は前半がインサイド(監禁部屋)、後半がアウトサイド(脱出後の世界)とわかりやすく二部構成化されているのですが、前半のことが尾を引きすぎちゃったんですね。しかも、作中でいくら事態が好転したように見せられても、彼女らにはまだまだ今後の壁が山程あるようにさえ思えてしまい、「めでたしめでたし」な気分には全くならず、どんよりした気分で劇場を後にしたのです。

勿論、この二人の絆がある限り、今後どんな困難が待ち構えていてもきっと大丈夫!と、我々が思えるような作りにちゃんとなっていたと思います。だからこの作品が説明不足だとかそういう話ではないことも理解しています。それでも僕は納得できなかった…!まるで、当事者である母子がこの困難を乗り越えたのに、僕だけが乗り越えられなかったかのように思えてしまいます。

f:id:ma2baga2:20160125005641p:plain「感動の幕切れ」よりも先に、僕の心が折れてしまった。

<ネタバレ注意>本トピックは、もう少し踏み込んだ内容に触れます。

ネタバレを避けたい方は次トピックまでスキップしてください。

 

 

有り体な言い方になりますが、ジャックくんは拉致監禁・強姦の果てに命を授かった子だということが作中でわかります。本編でも不躾なインタビュアーがその件に触れていましたが、ジャックくんが成長すればいずれその事について触れざるを得ない時期がくるかもしれない。あああ…愛が無くても着床すれば子供ができてしまう人体の構造が憎い!(お前は何を言っているんだ。)

ジイジ(祖父)のロバートが、我が孫ジャックの顔を直視できずにいるシーンがありましたが、僕は「そりゃそうだ」の一言に尽きました。自分の、そして我が娘の人生を台無しにした張本人との間に生まれた子供。果たして無条件に愛せるでしょうか。僕は割り切れないロバートの心情の方がむしろ自然だと感じました。ジョイ(ママ)は半ば自己暗示のように「ジャックに父は居ない」と主張し、脱出後は二度とオールドニック(監禁犯)を思い出さないように努めます。しかし最愛の息子ジャックこそが、オールドニックの存在と切っても切り離せない要因になっている事実はそこに在り続けるわけで、僕はこんなに残酷な話があるだろうかと思いました。本当に胸が苦しい。

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二人の愛を感じれば感じるほど脳裏に嫌なノイズがチラついて大変辛かった。

あと、胸が苦しいシーン繋がりでもう一つ。監禁の自覚がないジャックにとって、今の生活にある程度満足しているというのがミソなんですよね。彼は死体のフリをして脱出するようジョイに訓練を受けますが、そんな怖い思いをしてまで脱出しなければならない理由がわからないジャックが音を上げて「ママなんて大嫌いだ!」って泣いちゃうシーン。ジョイの心情を考えると余計に苦しくて、二人を見てられませんでした。大変クオリティの高いシーンだったと思います。

 

f:id:ma2baga2:20160125005641p:plain事態の凄惨さが重すぎて、ハッピーエンドへ昇華しきれなかった。

繰り返し言ってますが、とどのつまりそういうことでした。二人は作中でわかりやすく「部屋」と決別した。親子の深い絆に心を打たれた。それでも前半に溜め続けたソウルジェムの濁りを浄化するには至りませんでした。(あ、要するにモヤモヤが残ったってことですね…。)

親子の絆に感動した!!と言ったレビューをたくさん読んでから臨んだ映画だったこともあり、なぜ僕はこんなに沈んだ気持ちで劇場を後にしてるんだろう?と思ったりしました。しかもその日たまたま小雨が降ってて、折り畳み傘をカバンから出すのが面倒だから濡れて帰って余計にテンション下がりました…あと横断歩道でスーツ姿のカップルがおもいっきりチューしてて更にテンション下がりました……あ、この話完全に蛇足ですね……。

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ハートウォーミングを期待しすぎていたのかもしれない。想像の五億倍過酷だった。

普段から拝読しているお気に入りブログの方々は大絶賛。毎週欠かさず聞いてるタマフルでは「万人にオススメできる傑作」との評。むしろぬるすぎるという真逆の批判意見まで散見される始末……。

それでも僕は!僕は!言わせてください…アカンかった……!!この映画が大好きな皆様すみません、現場からは以上でーーーーーす!

 ある意味これほど心にズシンと来たというのは、それだけ映画を楽しめた証拠かもしれません(小声)

おわり

 

16/05/07 追記

みんなだいすき三角絞め先生の記事がめっちゃ賛同できたのでご紹介します!

温冷浴とは良く言ったものです。