映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

葛城事件 感想

えげつなかった。

ファインディング・ドリーもシング・ストリートも感想溜めたままにしてるけど、さっき観てきた勢いでこちらを先にしたためます。

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ネタバレ:核心を突くネタバレ無し。細かいシーンについては触れます。

f:id:ma2baga2:20160717093942p:plainおよそ2時間、最初から最後まで胸が苦しい。もう許してくれ。

本作は、無差別殺人にて死刑宣告を受けた通り魔の家族にクローズアップした作品なのですが、感想としましてはあまりの陰鬱さに「もう許してくれ」の一言でした。語弊を恐れず言うと、底なしに不愉快な映画です。「観るんじゃなかった」と思う人も居ておかしくないと思います。

ただ、私個人としては、観てよかったかなと思いましたので、その辺を今日は書いていこうと思います。

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一見どこにでも居そうな家族の、絶望的な物語。

本作は「事件後」の話と「事件前」の話が何度も交差する編成をしており、一先ず最初は「事件後」から始まるのですが、我々は冒頭ほんの数分で葛城家の醜さに絶望することとなります。その最たる例が稔(次男・通り魔犯人)への初の面会シーンです。これがもう、心が折れるほど絶望的。よくもそんなガバガバの理論でいけしゃあしゃあとご高説を垂れることが出来るな???と、観ている我々も腸が煮えくり返ります。あまりに言い分が酷すぎて、もはや会話が成立しないんですよね。クリーピーの西田(香川照之)は話が通じそうで通じない気味悪さが魅力的でしたが、こっちは一目見てわかるサイコパスです。

本シーンを我々観客は「無差別殺人犯はやっぱり頭のおかしい人間なのだなあ」という認識によって処理します。つまり、彼の言い分が理解の範疇を超えているから、「こいつは頭がおかしい特殊な奴だ」と、我々の住まう社会とは別枠の人間として捉るんですよ。

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閾値を超えた不愉快さに、思わず「こいつは狂人だから仕方ない」と片付けたくなる。

しかし、しかしです。本作はそれで許してくれないのです。その後描かれる「事件前」シーンの数々が「あいつらは我々の身近にも存在し得るぞ。」と僕たち観客へ語りかけてくるのです。そして「こういう奴、身近にいるかもよ」という説得力は「お前も、お前の家族も、そうなる可能性があるんだぞ」というメッセージ性へと変化してゆくのですよ………これが嫌過ぎる~~~~~~~~~~!!!!むしろ、完全に頭の狂った人間だった方が、まだ良かったと言いたくなる!!!

 

f:id:ma2baga2:20160717093942p:plain圧倒的な絶望包囲網。頼むもう勘弁してくれ。

脚本もさることながら演出も的確です。各シーンに一縷の望みも与えない、まるで隙間をみっちりと密閉するかのような救いの無さに覆われています。

例えば、作中唯一の憩いのシーンとして、家族がたわいもない雑談をするシーンがあるのですが、このシーンもまた、次のシーンの絶望感を増すために用意されたお膳立てに過ぎなかったりします。ここの演出がもう最低最悪に絶望的(めっちゃ褒めてます。)なので紹介させてください。

そもそも雑談してる内容は取るに足らないちっぽけな話なのですが、他のシーンがあまりに醜い故に、この家族らが普通に会話してるだけで、あったか~~~く映る訳です。「私はちらし寿司だな~」「うな重は普通すぎない?」「じゃあ、カツは?」等と、しょうもない話をしている家族を見て「あああああああああ家族って本来こういうもんだよなあああ、あったけぇなあ、あったけぇなあ……尊いなあ……」と、しみじみ思うわけです。こんなくだらない、当たり前のような日常がこんなにも愛しく思えるなんて……。そんな感情になった矢先、やかんが沸騰するピーーーーーーッ!という音ともに…………ゾワゾワゾワッ!!!!!!ですよ。この演出!!!!まさに、地獄です。(褒めてます)

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この気持をあえて形容するなら……「おぞましい」でしょうか……

あとは最初から最後まで家庭で出てくる食事が全てコンビニ弁当や宅配ピザなどに終始している点や、家庭で唯一まともに思えた長男の保(たもつ)が「やっぱりこいつもこの家族の一員なんだな」と痛感させられる行動をとる瞬間など、やめてやめてやめて!!!と叫びたくなるシーン満載でございます。

あと、すごすぎて言及するの忘れてたけど、役者の演技も半端じゃない!全員マジで超絶すごいですよ!(褒め方適当か。)

f:id:ma2baga2:20160717093942p:plain決して絵空事ではない、明日は我が身という恐怖。

彼らは確かに狂人なのだけど、行動原理が全く理解できないかというとそうではなく、「こういう考えに基づいて動いてるんだろうな」という想像はついちゃうんですよね。彼らには彼らなりの意図を持っている。例えば葛城清(三浦友和演じる、犯人の父)の教育方針にも、行き過ぎた内容は数あれど根底には良かれと信じている正義や信念があるんですよね。その歪みが凄惨な環境を招いてしまった。

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「俺がいったい、何をした!!」 この叫びは彼の根っからの本心なのでしょう。

その証拠に、中華飯店で店員を叱り散らかすシーンも、本人は良かれと思ってるんですよね。店員が去った直後に「ほら、水餃子は美味しいでしょ。」って愛想振りまいてね。今更水餃子の味を楽しめるような空気ちゃうわ!!と言いたくなる。でもそれに清だけは気づいていない。ホラーだわ~~~~~~。だから、突拍子もない話じゃないんですよ。コミュニケーション不足や行き過ぎた信条、そういった重なり合わせによって明日は我が身なんですよ。それがまた怖い。家族ってどういう関係だっけ?地盤がゆるゆるになって怖い怖い。

だからまぁ、最後の最後にとった清の行動はある意味救いだった気もします。「やっぱ俺らはこいつとは違うよ」と、信じられるという救いです。

f:id:ma2baga2:20160717093942p:plain映画とは関係ないけどちょっと聞いてよのコーナー

ところでこの映画でハッと閃いたのですが、どうやら僕は「鋭利な凶器で刺すシーン」が死ぬほど苦手なんだなと明確に気が付きました!!!アイアムアヒーローのゴア描写はセーフだったのですが、鋭利な凶器だけは無理らしいです。

だからあの名作「ヒメアノ~ル」も鋭利な凶器が頻出したせいで最高潮のテンションになりきれなかったんですね。いやーーー腑に落ちました。血が怖いというより、刺殺が怖いんだなあ。なんでだろ。先端恐怖症ってわけでもないんだけどな。痛そうだからかな?(適当)

 

ということで葛城事件、よかったです~(台無しか。)