読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画おじさんの絶品クリームシチュー

謎テンションで新作映画の感想を書きます。

彼らが本気で編む時は、 感想

すーーっごい良かったので、久しぶりに書いてみます。

f:id:ma2baga2:20170226215149p:plain

 

本記事のネタバレ:核心は避けますが細かなシーンに触れるため、視聴後をおすすめします。

f:id:ma2baga2:20161008212650p:plain とりあえず予告編をご覧くださいのコーナー。

そういやゴスペラーズの曲最後まで流れなかったね…。

 

f:id:ma2baga2:20161008212650p:plain 多幸感と愛情で満たされる、人と人との物語。

2017年初の記事は本作「彼らが本気で編む時は、」となりました。今年に入って八作目の映画鑑賞となりますが、暫定ベストです。良いものを観させてもらい、幸せな気持ちでいっぱいです。

僕が本作を大好きになった理由は、生田斗真演じるリンコを始めとし、トモ、マキオといった作中の登場人物を愛してやまなくなったからに他なりません。本作は生田斗真トランスジェンダーの女性を演じたことが話題に挙がっておりますが、この映画が行き着く先は、性別を超えた更に先にある、人と人との物語でした。

育児放棄でマキオの家に居候したトモは、母から受けたくて仕方なかった愛情を、リンコからたっぷりと注いでもらいました。最初は心に壁を作るトモでしたが、リンコの深い深い心からの愛を受け、徐々に打ち解けてゆきます。トモがリンコに良くしてもらった時に見せる、あの生意気でもありながら年相応でもある嬉しそうな表情がたまらないのです。(不勉強ながら柿原りんかという子役さんは初めて知りまして、生田斗真に負けず劣らず名演で素ッッ晴らしかったです……。)嬉しそうにタコウィンナーを眺めるシーンのたまらなさと言ったら。もう、良かったね…!良かったね…うおおおおん…… 

f:id:ma2baga2:20170226222406p:plain

うおおおおおおん うちの子になれよ~~~~~(安直)

こうして、トモを通じてリンコさんの海よりも深い愛情を目の当たりにした我々は、既にジェンダーなんて超越した境地でリンコさんを好きになってしまいます。もう、言うなれば女神なんですよ。リンコさんは、女神!!!リンコさんは女神なわけです。

そしてそしてトモも完全に心を開いた、このいい具合のタイミングで、いわば偏見の象徴として小池栄子演じるヒロミが登場してトモに言うんですよ。「さっき変な人と一緒にいたでしょ。何かあったら私に言うのよ!」

もう、お、お前~~~~~!!!我らの女神リンコさんに、お前~~~~!! ですよ。この瞬間、自分と異なる人を奇異な目で見る浅ましさ、多様な生き方を尊重できない心狭さに身をもって気づきます。

f:id:ma2baga2:20170226223745p:plain

憎まれ役の名演っぷりに軽く引く、小池女史。

果たして僕らはどうなんでしょう。本作は、「我々も無意識に小池栄子側に立っていないか?」などと問いかけるような、居心地の悪い演出はありませんでした。あっても良かったのかもしれませんが、監督は説教臭くならないようにしたのだと思います。

 

f:id:ma2baga2:20161008212650p:plain フード理論とおっぱい理論に泣かされる。

本作は食べ物が非常に重要な意味を持った作品です。ジブリ細田守作品で提唱されるフード理論ですが、このフード演出が的確で素晴らしい。その日の夕食が109シネマズのホットドッグだった私にとって、これらの演出はお腹がすくわすくわ(知らん)。

トモはリンコに食べたいものを聞かれて、切り干し大根やら、イカの塩辛やらと酒のツマミみたいなおっさんくさい食べ物を答えます。対して、コンビニのおにぎりは、食そうとすると激しく嘔吐してしまいました。これらがどちらも母の影響であることは誰もが察しのつくところでありますが、前者はどうして、トモの好物になったのか。

それは、お母さんと一緒に食べた思い出があるからなんでしょうね~~~~~~うああああああああああ泣けるーーーーーーーーーー!!!!

考えてもみてください。あのお母さんが酒のツマミなんか、手料理で手間暇かけて作るわけがない。クオリティで言えば、おにぎりだってイカの塩辛だって一緒のようなもんです。どっちにしたってコンビニやスーパーで買ってきた即席の既製品。だけどこんなに好き嫌いが分かれたのはなぜか? それは、その場にお母さんがいて一緒に食べたか、一人で食べたかの違いなんしょう・・・・あああ、ああああああああ~~~~~(嗚咽)

f:id:ma2baga2:20170226224830p:plain

この後、トモはウィンナーと唐揚げが大好きになったに違いない。

あと、後者のおっぱい理論はネタバレが避けきれないため最後に回します。

 

f:id:ma2baga2:20161008212650p:plain とっても笑える映画でもある。笑える日常が、また尊い

要所要所の小ネタがめっちゃ面白いんですよね。まあまあ狭い劇場に半分くらいの客入りでしたが、それでも笑いが溢れていました。

特に誰もが爆笑必至の「煩悩」に対する決着までの過程ですが、映画史に残るトリッキーな画で度肝を抜かれました。キャッキャ言いながら舞い散るアレのシーンは、キングスマンの威風堂々に並びインパクト部門第2位に刻まれました。

監督、貴方はどういう生活を歩めばこの画を撮ろうという思考に至るのですか。

f:id:ma2baga2:20170226225413p:plain

 あとはトモの言動も鋭くていいですね。「消費税込み?」とかも可愛くて良かったですね。

そんな感じで全体通して楽しく見ていたので、ある意味先述の小池栄子んとこの親子や、取ってつけたように登場した病院のくだり(そしてあそこのクソ看護師)がむしろ逆に浮いてみえた感じでした。なにより小池栄子は今後カイくんをちゃんと育ててくれるのか大心配です。

 

f:id:ma2baga2:20161008212650p:plain 言わずもがな、生田斗真の名演たるや。

これはもう、みなまで言うなといったところですが、生田斗真の女性演技がすごかった。僕らは生まれてこのかた男性をやっているわけで、一挙手一投足が男性の振る舞いで染み付いてるはずです。しかし作中のリンコは確かに女性でした。

インタビューで生田斗真は、「カメラを回されているときだけ女性になるのは不可能だったから、常日頃からネイルやスカートなど女装をしていた。」と語っていました。リンコが女性に見えないと作品の根底が揺らぎます。そこをしっかり押さえていた生田斗真の演技は本当に素晴らしいの一言です。

f:id:ma2baga2:20170226231327p:plain

例えばさりげない1シーンで、マキオとリンコがキスするシーンがあるのですが、非常にナチュラルにその画を受け入れられました。これはリンコを女性と認識していたからこそのことだと思います。

また、女性らしく在りたいと人一倍強く願って生きてきたリンコだからこそ、女性より女性らしい振る舞いをします。同僚の佑香は対照的で、えらくサバサバしたもんです。そうした背景も包括した熱演だったと思います。生田斗真、ただのイケメンじゃなかったのね(急に失礼な発言)

 

 

 

以降、ネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

f:id:ma2baga2:20161008212650p:plain 母から享受するおっぱいの愛。

トモが再び母と暮らす決意をし、リンコが最後に贈ったプレゼントはおっぱい型の編み物でした。見た目のインパクトが凄まじいので劇場からも数名の笑い声。「ふふっ」と笑ってしまうオチという意味でも良かったのかもしれませんけれど、そこに込められたメッセージの深さたるや、想像すると計り知れません。

言わずもがな本作でおっぱいは母性・母から受ける愛情の象徴でした。幼い頃からママの胸に抱かれないトモの寂しさは想像を絶します。そんなトモが、リンコからおっぱいを通じて愛情を享受しました。トモにとって、あの編み物はリンコの母親としての愛そのものです。一緒に住まうことは適わなくとも、住まいは離れていても、血は繋がっていなくても、生まれた性別が違っていても、トモにとってリンコはもうひとりの母親であることに変わりはないのだなあ。そう思える最高の幕引きでした。

また遡れば、あの編み物はリンコ(当時、リンタロウ)が中学時代に母親へトランスジェンダーを打ち明けた際、初めて貰ったプレゼントでもあるわけで。母親から受けた愛をそのまま、自分が母親としてトモへ注いでることを思うと、更に深みが増します。

 

本当はナイスガイズ!観るつもりが、たまたまこっちのほうが観やすい時間帯に上映していたから観に行った程度でしたが、完全に舐めてました。

あえて、あえて不満を述べるなら「偏見を持つ側の人間」の描き方がいびつな気がしたり、悲惨さを描くシーンが少々場当たり的かな?とは感じるものの、もうそんなものは気にしません。素っ晴らしい。掛け値なし、オススメでございます。

 

おわり